ユーザエクスペリエンスデザイン
コンセプト
Webサイトの企画の骨格ができたら、具体的なWebサイトをブレイクダウンして作ってゆく作業となります。この具体化作業を「ユーザエクスペリエンスデザイン」のプロセスで説明します。ユーザエクスペリエンスデザインとは、そのWebサイトで達成すべき「ビジネスゴール」とそのWebサイトを使ってほしい「ターゲットユーザ像」およびそのユーザニーズをもとに、それらのビジネスゴール・ユーザニーズを実現するWebサイトを具体的な形として作り上げるプロセスです。
ユーザエクスペリエンスデザインの「ビジネスゴール」は、
・事業としての「Webのサービス」であれば、その商品としてのポジショニングであり、
商品企画の骨格(コンセプト)
・プロモーションの一部としてのWeb活用であれば、ユーザとのコミュニケーションの中での
Webの役割
となります。
ユーザエクスペリエンスデザインの最初の作業は、「Webサイトのコンセプト立案」です。サイトのコンセプトとは、どのようなサイトにするのかということであり、基本的には上述の商品ポジショニングやWebの役割から来ますが、ユーザニーズや運用ニーズも考慮した上で、「どのようなWebサイトにするのか」その基本的な考え方を決めて、後工程のデザインなどでも指針となるように簡潔な言葉にまとめます。
ペルソナとインサイト
Webサイトのコンセプトを作成したら、いま設計しようとしているWebサイトのターゲットユーザ像をできるだけリアルに設定します。イメージに合うような顔写真なども選択して、できるだけ年齢性別、職業からどのようなことに興味があるかなど、できるだけリアルにユーザ像を設定します。このようなユーザ像のことを「ペルソナ」といいます。ターゲットユーザとして、三つのタイプを想定しているのであれば、それぞれについてペルソナを作成します。
このようなリアルなユーザ像をもとにして、各ユーザタイプごとに、必要となる機能/あると望ましい機能などの検討/抽出を行うとともに、それらのユーザがサイトを訪問して、どのように行動(ページ遷移)してもらうかを設計してゆくのですが、それらの作業すべてのもととなるのが「ペルソナ」です。
ペルソナを作成する目的は、Webサイトの設計にあたり、どのようなコンテンツがどの程度の詳しさで必要か、どのような機能が必要か、情報はどのように分類されているとわかりやすいか、などを決めてゆくにあたり、ターゲットユーザはどのように思うかが設計者が想像できるようにするということにあります。そのために必要なたぐいのパーソナリティ、知識レベルなどを規定しておくことが望まれます。
「ユーザインサイト」とは、ユーザが意識していない部分も含めて、ユーザがどのようなことを欲しているか、どのような情報やサービス・機能があると喜ぶかということです。「ユーザニーズ」というと、基本的にユーザ自身がすでに認識していて、調査などで聞いたら答えてくれる要望を指しますが、ユーザは必ずしもすべての要望を認識しているわけではなく、実際に商品やサービスを具体的に提供・提示されて、はじめてそれがほしかったことに気付くことがよくあります。「ユーザインサイト」とは、そのようなユーザ自身も気がついていないものも含めて、どのようなサービスや情報・機能を提供するとユーザが喜ぶか、それを洞察して見つけ出そうというポイントです。ユーザインサイトを導出するためにも、ペルソナの作成は重要となります。
エクスペリエンスフロー
ビジネスゴールとターゲットユーザ像からサイトコンセプトを導出して、ペルソナを作成した上で、サイトとユーザとの絆を作り上げる肝となるユーザインサイトを決めた後に、ユーザエクスペリエンスフローを作成します。
ユーザエクスペリエンスフローとは、ユーザにそのサイトのまずどのページをアクセスしてもらって、どのように情報を得たり興味をもってもらって、次にどのページを読んでもらって、最終的なゴールとなる商品の購入や資料の請求、あるいは商品情報を得るという行為をするまでのサイト内でのユーザの動き(フロー)です。
ユーザエクスペリエンスフローを考えるにあたって重要なのは、ユーザの態度変容です。もともとは、ある知識はもっていて、別の知識はもっていないで、ある商品に興味をもってサイトを訪れたユーザが、最初にあるコンテンツを見つけて読んだ後に、ある情報は得たことによってさらにより詳しい情報をほしくなったり、商品を購入する意思を強めたり、ユーザの心理が変化してゆきます。その変化してゆく各段階が何で、どのように変化してゆくか、変化していってほしいかを考えてゆきます。上記の図も、そのような態度変容を意識してフローを書いた上で、そのようなフローをスムーズに実現するために必要となると考えられる機能をあげています。
このように、ユーザのペルソナを作成して、そのようなユーザにサイトをどのようにアクセスして利用してもらうかというフロー(シナリオのようなものともいえますね)を具体的にイメージしてゆくと、どのような情報はかなり詳しく掲載したほうがよいか、どのような情報は概要だけでよいか、どのような使い方ができるような機能を用意しておいたほうがよいか、などがわかってくるので、サイトに用意するコンテンツ、サイトに用意すべき機能などを洗い出すことができます。
デザインから制作
以上のプロセスを行ってゆくと、そのWebサイトに掲載するコンテンツ、用意する機能などが洗い出されてきます。
それらの洗い出されたコンテンツや機能を含むWebサイトをどのような「見せ方」に作り上げるかというプロセスを次に行うことになります。流れとしては、
1. サイトの情報設計
2. グラフィックデザイン
3. 制作 (htmlコーディング、システム実装)
となります。
「情報設計」とは、サイトに含まれている情報の内容を整理して分類することにより、ユーザにとってわかりやすいサイトの構造、各ページのレイアウト、ナビゲーションの形などを決めてゆく作業です。
サイトの情報設計を行うと、サイトの構造(ページ構成)がほぼ決まり、各ページに含まれる要素、概略のレイアウト(ページ内の各要素の優先順位や関係などによってきまってくるおおよそのレイアウト)なども決まってきます。
そこまで決まってくると、グラフィックデザインを行うことになります。サイトのコンセプト、ターゲットユーザに対してどのような印象を与えるサイトとしたいか、などによって、サイトのトーン&マナーを決めてゆきます。また、ナビゲーションパーツなどのサイト内でいろいろな箇所で使いまわしされるパーツについては、それぞれのパーツの意味合いに合った見た目のものにデザインして作るととともに、どのような箇所にどのパーツを用いるかなども含めてのデザインルールを決めてゆきます。このようなデザインシステムをきちんと作り上げてルールにそったデザインパーツがきちんと配置されているサイトは直感的にわかりやすい、あまり迷うことのないサイトとなります。個別のサイト特有のデザインについては、それぞれデザインしてゆきます。
以上の作業により、各ページの内容から見た目まで規定されてきますので、その見た目を実現する制作実装を行うことになります。静的なhtmlページであれば、htmlコーディングすればよいのですが、システム実装を含む動的なページであれば、各ページについての単なる静的な見た目だけでなく、ボタンを押したとき等のユーザがアクションを起した際の処理について要件をより詳細に規定してゆく必要があります。エラー処理なども規定する必要があります。外部とのやりとりを要件として規定すれば、その見た目についてはhtmlテンプレートとして制作するとともに、システムの設計から実装を行ってゆき、実際に動くシステムを作り上げることになります。