アクセスログ分析
ログ分析作業の方法論
アクセスログ分析も、ひとつのサイトのアクセス傾向分析をあるひとつの時点で行うことから、ひとつの会社で運営しているさまざまなサイトのアクセスログ分析環境を整備することまで、いろいろではあるが、
ひとつのWebサイトのアクセスログ分析環境から体制を一式整備することを考えると、下記のような作業を行うことになる。
1. アクセスログ分析により確認・検証する内容の明確化
2. アクセスログ分析した結果として得るデータ項目の具体化
3. ログ分析ツールおよびシステムの実装
KPI(Key Performance Index)が細かく具体的に設定されていれば、その中の一部の項目をアクセスログ分析により確認・検証すればよいということになり話は簡単です。
しかし、実際のところ、そのWebサイトをユーザがどのように利用するか(あるいはすでにWebサイトが存在しているのであれば、ユーザがどのように利用しているのか)、については想像があまりつかないという場合も、もちろんあります。そのような場合には、ある程度はどのように利用してほしいと考えているという想定はあったとしても、実際にはどのようにユーザがサイトを利用しているかという状況を把握したいという目的がある場合があります。
また、Webサイトを運営していれば、毎日・毎週・毎月というレベルでアクセス傾向やアクセスの値は確認するものですが、上述のような傾向分析をきちんとやろうとすると、かなり手間がかかりますので、そのような詳細分析は半年ごと、あるいはサービス開始して3ヶ月後に一度はやるもののその後はユーザ動向にはっきりした違いを感じるようになるまでは特に行わないということもありえます。
一般に、毎日・毎週・毎月のレベルで、定期的に同じ項目の値をとってアクセス傾向を確認している定点観測と、非定期でより詳細な分析を行います。
また、すこし違う視点での説明をすると、Webサイトをユーザがどのように利用してほしいかという設計時の仮説があり、その仮説が正しいかを確認するというプロセスがまずあり、その仮説に基づいてポイントとする箇所のデータを定期的に観測する定点観測と、ある程度の期間がたってくるとユーザのサイト利用動向にも変化が生まれたりするので、仮説の再検証を行うという非定期での詳細分析を行うことがあります。総合的に、ユーザのサイト利用を把握しつづけておくということがアクセスログ分析の目的です。
定点観測は、とくに測定するデータ項目を事前に明確にしておき、集計フォーマットなども用意した上で行うとよいので、事前にはその項目を明確に設定しておく必要があります。
また、測定できるかどうかということも問題になるので、3. の分析ツールの検討とも関係してきます。基本的にはKPIをブレイクダウンしてアクセスログ分析の結果としてほしいデータ項目を具体的してゆき、それらの値を測定できるようなログ分析環境を用意しますが、技術的に困難な場合もありますし、予算面での制約などもあったりしますので、それらの点と総合的に調整してログ分析ツールおよびシステムの要件を決定して、対応づけて具体的に測定するデータ項目を最終的に決定してゆきます。
ログ分析でわかること
アクセスログ分析では、いろいろなことを確認することができますが、大きく分類すると「サイトへの訪問数、ページのアクセス数」「ユーザの流入元」「サイト内でのユーザの動き(動線)」「購買のようなはっきりとしたゴールがあるサイトの場合は、サイト訪問者がそのゴールに到達する率(コンバージョン)などがあります。
基本的なログ情報からわかること
広告・検索エンジンからの流入
そのWebサイトに来る直前にどこにいたかという情報がアクセスログからとることができます。「リファラ」といいます。また、検索エンジンでどのような検索エーワードを入れて検索したかについては、URLに引数としてついてくるのでやはり「リファラ」情報から得ることができます。
- そのユーザはどこからやって来たか
アクセスログファイルの「リファラ」に記録されます
※「リファラ」を記録する設定にサーバをしておく必要があります
- 何を探してやって来たか
検索エンジンで指定した検索キーワードは、検索結果画面のURLに検索キーワードをURLエンコーデ
ィングした形で引数につけられて含まれていますので、やはり「リファラ」に記録されています
動線の分析
「動線」とは、あるユーザがそのWebサイトをどのように動いたかということですが、「動線の分析」が重要なのは、Webサイトの設計者・運営者の意図通りにユーザが必ずしてそのサイトを利用しているとは限らないからです。
・トップ・ページが必ずしも一番見られているとは限らない
・リンクを用意してあるからといってみてもらえるとは限らない
・目立つように配置したからといって見てもらえるとは限らない
・期待しているキーワードで情報を探してもらえるとは限らない
動線=「あるユーザーがWebサイト上でたどったページ遷移」(ユーザー側の見方)
導線=「ユーザーをゴール(購入ページなど)へ導くページ遷移」(サイト側の見方)
動線≠導線
だから「動線」を追って,行動をつかむ必要がある
アクセスログ分析では、「ユーザの追跡」を行うことができます。 もちろん、そのユーザの名前や住所などの個人情報はわからないわけですが、ある時刻にあるページをアクセスしたユーザが次にどのページをアクセスしているか、ということを「追跡」する機能をもっています。「追跡」の仕組みとしては、クッキーを利用することから、アクセス元のIPアドレスとUser Agentなどを利用するものなどがあり、追跡の厳密性は高くはない方法もありますが(通常、100%正確ではありません)、Webサイトのアクセス「傾向」を把握するためには十分な情報を得ることができます。
アクセスログ情報の活用のイメージとしては、たとえば下記のような展開などがありえます。
ログ分析の仕組み
アクセスログ分析での情報収集の仕組みとしては、大きく以下の3つの種類が存在します。
1. Webサーバのアクセスログファイルから分析する方式
2. ページにタグやスクリプトを埋め込む方式 (スクリプト方式)
3. ネットワークを通るパケットを収集して分析する方式 (パケットキャプチャ方式)
1. Webサーバのアクセスログファイルから分析する方式
アクセスログ分析の仕組みとしては、最も基本的なものです。ApacheのようなWebサーバソフトにアクセス情報を記録する仕組みをもっていて、アクセスログファイルとして記録します。そのアクセスログファイルを後処理として集計するものです。
代表的なツールとしては、WebTrends, Urchin, SiteTracker, analogなどがあります。
2. ページにタグやスクリプトを埋め込む方式 (スクリプト方式)
近年、アクセスログ集計の方法として広まってきている方法です。ひとつの理由は、Googleが無料アクセス集計サービス"Google Analytics"を提供していることがあります。Google Analyticsはスクリプト方式です。
タグ埋め込み方式のメリットは、ブラウザやプロキシサーバのキャッシュの機能を無効にして集計用のサーバにすべてのアクセス情報を送ることができるので、データの正確性が高いということと、アクセスログファイルの集計用のシステムを用意する必要がないところです (通常は業者が集計用のサーバを用意)
代表的なツール・サービスとしては、SiteCatalyst, Visionalist、GoogleAnalyticsなどがあります。
3. ネットワークを通るパケットを収集して分析する方式 (パケットキャプチャ方式)
Webサーバを収納しているデータセンターのインターネットへの出口のところのスイッチのミラー機能を利用して、インターネットを介してのデータのやりとりのすべてのコピーをとってしまい集計するものです。
データ収集用のシステムを用意する必要がありますが、多くのWebサーバ・Webサイトを運営していて、とくにひとつのデータセンターに収納されている場合には、Webサイトの追加・廃止などへの対応が簡単にできるというメリットがあります。
代表的なツールは、RTmetricsです。
ログ分析の例
ログ分析において、よく見られる分析の視点をいくつか紹介します。
1. 流入元および流入元ごとの動線・コンバージョン分析
多くの場合において、Webサイトがその目的を達成するためには、まずはそのWebサイトに多くのユーザが訪問してきてくれる必要があります。
そのために、バナー広告・テキスト広告やリスティング広告、アフィリエイトなどのプロモーション手段を行使することもよくありますが、それらの手段には費用がかかります。費用がかかる手段を行使する以上、費用以上の効果を得ているかどうかの確認をする必要があり、アクセスログ分析はそれを可能とします。
流入元(プロモーション手段)別のサイトへの流入数、購買や資料請求などのゴールまでたどりついた数およびその流入総数に対する割合(コンバージョン)をモニタするのが基本ですが、コンバージョンするための途中の動線についても分析して、コンバージョンの高低の原因究明に役立てることが可能です。
2. トップページおよびその他の主要入り口ページからの遷移の分析
多くのサイトでは、そのサイトに最初にアクセスするページはトップページということが最も多いのですが、検索エンジンからその他のページに流入してくることも多い場合があります。
流入してきても、すぐに離脱してしまうユーザの割合の確認、トップページから次に遷移するそれぞれのぺージへの遷移の割合の確認など、それぞれの流入ページごとに確認してゆくことにより、せっかくサイトを訪問してくれたユーザに訴求するページ構成とできているかの確認をすることができます。
3. 特定のコンテンツからの遷移およびコンバージョンの分析
ユーザに対して詳細な情報を提供するために取材からしてコンテンツを作ることがあります。食品であれば生産者のこだわり紹介だったり、商品であればその開発者のこだわり・苦労話だったりという内容です。
そのようなコンテンツはあって悪いことはあまりありませんが、せっかく費用と手間をかけて作成したコンテンツがどれだけの効果を発揮しているか、より効果をあげるコンテンツとすることができないか、などをアクセスログ分析にて分析・確認することができます。
まずは、特定のコンテンツのページをアクセスしたユーザがその次にどのページに遷移するか、それぞれへの遷移の割合を確認することから、コンテンツを読んでくれたユーザの動きをまずは知ることができますし、そのコンテンツをアクセスしたユーザがゴールまで到達する割合(コンバージョン)なども記録して、サイト全体のコンバージョンとの比較をするなど行えば、コンテンツを作成したことによるサイト売上に対する影響の値を数字で出すことも可能となります。